プログラミングスクールの講師を2年やって見えたリアルな業界事情
プログラミングスクールで講師を2年以上続けている。
「エンジニアになりたい」という受講生を毎週のように担当した。教える内容はHTML/CSSからPython、JavaScriptまで多岐にわたる。
現在進行中の経験から書ける、業界のリアルを正直にまとめる。
受講生の変化:2年間でかなり変わった
2年前と比べると、受講生の属性がかなり変わった。
最初の頃は「転職してエンジニアになりたい20代後半〜30代前半」が圧倒的多数だった。動機は明確で、「給料を上げたい」「安定した職種に就きたい」というシンプルなものが多かった。
1年ほど経つと、「AIに仕事を奪われる前に手を打ちたい」という受講生が増えてきた。40代以上の方も増えた。動機の「切迫感」が増した印象だ。
さらに変わったのは「ChatGPTで調べながら学びたい」という人が増えたこと。これは正直なところ、教える側の対応が追いついていなかった部分でもある。
受講生が挫折するパターン
2年間で見てきた挫折パターンにはある程度の傾向がある。
「まず動くものを作りたい」派の挫折
動機は良いのだが、基礎(変数、条件分岐、ループ)を「なんとなく」で通り過ぎてしまうタイプ。最初のうちはコピペと改変で進めるが、応用になった瞬間に詰まる。エラーメッセージが読めず、何が起きているのかわからなくなる。
この状態で「つまずきポイント」に当たると、急に苦手意識が出てきて脱落するケースが多かった。
「毎日勉強する時間が取れない」派の挫折
仕事しながらの受講者に多い。週末だけ集中してやろうとするが、1週間のブランクで前回の内容を忘れ、毎回同じところを復習するループになる。
プログラミングは「毎日少しずつ」の方が断然定着しやすい。これはスクール入学前に伝えるべきことだと思うが、なかなか伝わらない。
「完璧に理解してから次に進みたい」派の挫折
慎重で真面目な人ほどハマる罠だ。ひとつの概念を完全に理解してから次に進もうとするため、進捗が遅い。プログラミングは「なんとなく動いた体験を積み重ねて徐々に理解が深まる」という学び方が向いている。完璧主義とは相性が悪い。
講師側のリアルな業務
講師業は「教える時間」より「準備と対応の時間」の方が圧倒的に長い。
1時間の授業のために、2〜3時間の準備をする。受講生の進捗によって説明の仕方を変える必要があるので、複数のパターンの説明を用意する。コードの例題も「ちょうどよい難しさ」に調整するのが難しい。
質問対応は、授業外でもSlackやDMで来る。急ぎでない質問でも、受講生にとっては「今すぐ解決したい」ことが多い。対応が遅いと「サポートが薄い」という評価につながる。
給与については、時給換算すると見た目ほど高くない。準備時間は給与に含まれないことも多かった。エンジニアとして働く方が、時間あたりの収入は確実に高い。
「卒業後に活躍できる人」の共通点
2年間で、卒業後に実際にエンジニアとして活躍できた受講生には共通点があった。
自分で調べる癖がついている
質問が来ると「まず自分でどう調べたか」を聞くようにしていた。調べ方を知っている人は成長が早い。逆に「わからないから聞く」の最初のステップを飛ばす人は、独立後に詰まりやすい。
エラーを怖がらない
エラーが出ることを「失敗」ではなく「ヒント」として捉えられる人。エラーメッセージを読んで、自分でデバッグする試行錯誤を楽しめる人は、どんどん上達する。
小さいものを完成させた経験がある
在学中に「自分で考えて動くものを作り切った」経験がある人は、自信とノウハウの両方が身につく。スクールのカリキュラムをこなすだけでなく、自分のアイデアで何かを作ることが大事だ。
スクールに入る前に知っておいてほしいこと
正直に言う。
スクールに入れば誰でもエンジニアになれる、というわけではない。プログラミングは「向き不向き」よりも「継続できるか」の問題が大きい。毎日コードを書く習慣が作れる人は伸びる。
また、卒業後の就職サポートの質は各社でかなり差がある。面接対策や企業紹介の実態は、在校生や卒業生のリアルな声を複数聞くのが一番参考になる。
料金が高いから質が高い、とも限らない。無料でも良質な教材(MDN, Progate, Udemy)は多い。スクールの価値は「コミュニティ」「強制力」「質問環境」にあると思う。
まとめ
2年間の講師経験で見えたのは、「教育の難しさ」と「受講生の多様性」だ。
同じカリキュラムでも、理解のスピードも詰まるポイントも人それぞれ。一対一のサポートで「その人の詰まりポイントを外す」作業が、講師業の本質だと感じた。
プログラミングスクールを検討している人へ:入学前に「毎日30分以上、自分でコードを書ける環境を作れるか」を自問してほしい。それができるなら、スクールの投資は十分に活きる。