AI研修を企画・開催してわかった非エンジニアに教えるコツ
AI研修を企画・開催してわかった非エンジニアに教えるコツ
プログラミングスクールで講師をやっている経験と、前職でAI研修を企画・運営した経験から気づいたことをまとめる。非エンジニアにAIツールを教えるのは、エンジニア向けに技術を教えるより難しい面がある。何が難しいかと、どう乗り越えたかを書く。
どんな研修だったか
2日間のAI活用研修。参加者は営業、経理、人事など20名ほど。全員スマホは使えるが、ChatGPTを触ったことがある人は半分以下という状態からスタートした。
目標は「業務でAIを使える人を増やす」こと。ツールの紹介ではなく、実際に使えるようになること。
最初の失敗:専門用語が通じない
最初の30分で壁にぶつかった。「プロンプトを工夫すると出力が変わります」と説明したとき、「プロンプトって何ですか」という質問が来た。
自分にとっての当たり前が、相手には当たり前じゃない。この認識のズレが非エンジニア向け研修の最大の課題だ。
対策:用語を使う前に必ず定義する。スライドに用語集ページを入れる。
コツ1:「魔法のコマンド」より「会話」で説明する
「AIへの指示文」と言うと難しそうに聞こえる。「AIとの会話」「AIへのお願い文」と言い換えるだけで理解が速くなった。
技術的に正確な説明より、相手の頭の中にあるメタファーに乗っかる方が伝わりやすい。
コツ2:業務の具体例から入る
「ChatGPTは文章を生成できます」という説明では使い方がイメージできない。
こちらの方が刺さった:
「先週、お客様へのフォローメールを30分かけて書きましたよね。その下書きをAIに15秒で作ってもらって、自分で5分修正するやり方に変えると、25分節約できます」
参加者が日常的に抱えている「めんどくさい作業」に直結した例を用意することが大事。
研修前に参加者アンケートを取った:「日常業務でこれが大変という作業を3つ教えてください」。これで具体例のネタを揃えた。
コツ3:ハンズオンの比率を7割にする
2日間のうち、講義は3割、実際に触る時間を7割にした。
よくあるのは説明が多すぎるパターン。聞いているだけでは「わかった気」になるだけで、業務で使えるようにはならない。
ハンズオンの構成:
- デモを見る(2分)
- 同じことを自分でやる(5分)
- 自分の業務に応用してみる(10分)
「自分の業務に応用してみる」が特に重要。研修が終わったらすぐ使える状態を作る。
コツ4:「うまくいかない」体験も設計する
AIが間違った答えを返す場面を意図的に見せた。「AIは嘘もつきます。確認が必要です」という話を、言葉だけでなく体験として残す。
実際にやったこと:
- AIに「〇〇という法律の条文を教えて」と聞かせる
- 自信満々に間違った内容が返ってくる
- 「これを業務で使ったら何が起きますか」と問いかける
研修後も「AIが言ったから正しい」ではなく「AIの出力を確認する」習慣がつく。
コツ5:プロンプトのコピペ集を渡す
研修後に持って帰れる「業務別プロンプト集」を配布した。
例:
【メール返信の下書き作成】
以下のメールに対する返信を日本語で作成してください。
トーン:丁寧だが親しみやすい
文字数:200文字程度
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[相手のメール内容をここに貼る]
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「研修で習ったことを覚えて帰れ」ではなく「いつでも使えるツールを渡す」スタンス。
コツ6:恥ずかしがらせない環境を作る
「こんな使い方をして恥ずかしくないか」という心理的ハードルが意外と大きい。
- ペアワークにして「一緒に試してみましょう」にする
- 「変な使い方はない」「試行錯誤が正解」と明示する
- 講師自身が「わからない」「失敗した」を見せる
安心して試せる場を作ることが大事。
研修後の継続率を上げる工夫
研修で習っても、使わなければ忘れる。継続して使ってもらうために:
- 社内チャットに「AI活用事例共有チャンネル」を作る
- 1週間後に「使ってみた事例」を共有するフォローセッションを設ける
- 「これAIで解決できますか」と気軽に聞ける窓口を作る
まとめ
非エンジニアへのAI研修で大事なことをまとめると:
- 専門用語を排除:相手の言葉で話す
- 業務の具体例から入る:抽象的な説明より実例
- 触る時間を7割:聞くより使う
- 失敗も体験させる:「確認する習慣」を作る
- 持ち帰れるものを渡す:プロンプト集、使い方シート
AI研修の本当のゴールは「研修が終わった後も使い続けること」。そのために研修中に何ができるかを逆算して設計するのが一番重要だと思っている。