【AI研修設計】ChatGPT/Gemini/Claude比較の2日間ワークショップを作った話

「AIの使い方を社員に教えてほしい」という依頼が来た。

エンジニア向けではなく、非エンジニアの社員向け。営業・事務・企画職の人たちを対象に、ChatGPT・Gemini・Claudeを実務でどう使うかを体験してもらう2日間のワークショップだ。

プログラミングスクールで講師をやっていた経験があるとはいえ、AI研修のカリキュラムを1から設計するのははじめてだった。「どう設計するか」の試行錯誤が結構おもしろかったので、記録として残しておく。

設計の前提を整理する

最初にやったのは「誰に何を教えるか」の整理だ。

対象者のスペックを確認すると、こんな感じだった。

  • PCは日常的に使うがプログラミング経験なし
  • ChatGPTは名前を聞いたことある程度(使っていない人が多数)
  • 「AIで仕事が楽になる」イメージはあるが、何をすれば良いか分からない
  • この前提で「AIの倫理」とか「LLMのアーキテクチャ」を教えても意味がない。必要なのは「明日から使える体験」だと判断した。

    ゴール設定はシンプルにした。

    > 2日間終了後、参加者が自分の仕事で最低1つのAI活用シーンを見つけられる状態にする。

    「AIを使いこなせる」ではなく「使えそうなシーンが見える」にしたのは、2日間で達成できる現実的な目標を設定したかったからだ。

    カリキュラム構成

    2日間・計12時間(休憩込み)の構成に落ち着いた。

    Day 1: AIを知り、触る

    | 時間 | 内容 |

    |——|——|

    | 午前 | AIの基本概念(30分講義)+ ChatGPT体験(90分ハンズオン) |

    | 午後 | Gemini体験(90分)+ Claude体験(60分)+ Day1振り返り(30分) |

    Day 2: AIを仕事に使う

    | 時間 | 内容 |

    |——|——|

    | 午前 | 3ツール比較まとめ(60分)+ 業務シナリオ別ハンズオン(120分) |

    | 午後 | 自分の業務へのAI適用ワーク(120分)+ 発表・共有(60分) |

    構成で意識したのは「知識より体験」の比率だ。講義は全体の20%程度に抑え、残りは実際に触る時間にした。

    「そもそもAIが何かを説明する」よりも、「実際に使ってみて、なるほどと感じる」体験の方が定着する。これはプログラミングスクールの講師経験から学んだことで、どんな技術教育にも共通する原則だと思っている。

    3ツール比較の教え方

    ChatGPT・Gemini・Claudeの3ツールを比較するセッションが、設計で一番難しかった部分だ。

    「どれが一番優秀か」という話をしてしまうと参加者が混乱する。実際のところ、ツールの優劣はユースケースによって変わるので、「Aが一番」とは言えない。

    そこで「料理道具に例える」という説明法を採用した。

    > 包丁・フライパン・電子レンジは、それぞれ得意な料理が違う。どれが一番良いかより、何を作るかで選ぶ道具が変わる。ChatGPT・Gemini・Claudeも同じ。

    この説明をしたあとで、同じ質問を3ツールに投げて出力を比較するデモをやった。

    使ったプロンプト例がこれだ。

    あなたは営業担当です。
    以下の条件で取引先への提案メールを作成してください。
    
    条件:
    - 相手: 中規模の製造業
    - 提案内容: 業務効率化ツールの導入
    - トーン: 丁寧だが親しみやすい
    - 文量: 400文字程度

    3ツールで出力されたメールを並べて表示すると、参加者が自分で違いを発見しやすい。「Claudeの方が文章が自然」「Geminiは要点がまとまってる」といった感想が自然に出てきて、「なるほど、ツールによって違うんだ」という理解につながる。

    Gemini CLIの紹介

    Day 2の応用セッションで、Gemini CLIをさらっと紹介した。

    コマンドライン操作に慣れていない人が多かったので、「プログラマー向けの高度なツールがあるよ」という紹介に留めた。実際に使ってもらうのではなく、「こんな使い方もできる」という視野を広げることが目的だった。

    # Gemini CLIの基本的な使い方(デモ用)
    gemini "この会議の議事録を要約してください" < minutes.txt

    このデモを見せたときの反応は、「えっ、コマンドで使えるんですか」という驚きが多かった。GUIツール以外の使い方があることを知ってもらうだけでも意味があったと思う。

    教材はHTMLで作った

    スライドをPowerPointで作るのをやめて、HTMLで自作した。理由は3つある。

    1. 参加者がスマートフォンでも閲覧できる

    2. コードサンプルのシンタックスハイライトができる

    3. インタラクティブな要素(コピーボタン、折りたたみ)が追加できる

    プロンプトのサンプルをHTML教材に埋め込んで、参加者が「コピーしてそのまま使える」状態にしておいた。研修中に「さっきのプロンプト、もう一回見せてもらえますか?」となるのを防ぐためだ。

    プロンプト例:メール作成
    あなたは営業担当です。
    以下の条件で提案メールを作成してください...
      

    やってみてわかった「非エンジニア向け研修」の難しさ

    2日間の研修を終えて、率直な感想をまとめると「準備より当日の調整が大変だった」だ。

    想定以上に参加者のITリテラシーに差があった。AIツールのアカウント作成でつまずく人がいる一方、すでに日常的にChatGPTを使っている人もいた。この差を埋めながら全員を置き去りにしないのが想像以上に難しい。

    あと「これって本当に仕事に使えるの?」という疑念を持っている参加者が多かった。AIへの期待と懐疑が混在している状態で、いかに実際の体験を通じて「使えるかもしれない」という感覚を引き出すかが鍵だった。

    対策として、Day 2の業務シナリオハンズオンは「各自の実際の業務」を題材にした。研修用の架空シナリオではなく、「先週あなたが実際にやった繰り返し作業」に対してAIを使ってみる、という形にしたことで手触り感が出た。

    まとめ

    ChatGPT・Gemini・Claude比較の2日間AI研修カリキュラムを設計した。

  • ゴールは「明日から1つ使えるシーンを見つける」にシンプル化
  • 講義2割・体験8割の比率で構成
  • 3ツール比較は「料理道具の例え」で直感的に理解させる
  • 教材はHTMLで自作、プロンプトのコピペを容易に
  • 技術を人に教えることで、自分の理解が整理される感覚は今回も健在だった。「非エンジニアにどう説明するか」を考え続けた2日間は、自分にとっても良いAI学習になった。